前衛の科学、料理とシンプリシティー


昨日、世界的に有名な料理学校「コルドン・ブルー」のオーナーであるアンドレコアントロー氏に会いました。同氏によれば新しい世代の料理人に影響を与えている一人としてエルヴェ・ティス(Hervé THIS)という国立科学研究所に勤務する科学者の名前が挙げられるそうです。彼はピエール・ガニエールと頻繁に仕事をしています。エルヴェ・ティスは代表的なレシピに使用される食材の分子の反応を研究し、その成果を料理の世界に反映したいと考えました。結果として思いがけない食材の結びつきを提案したり、個々の味のエキスを引き出すのに成功しました。こうした取り組みを「分子料理」と呼ぶ人もいますが、質の高さと完成度を追求するというフランスの風潮に沿うものです。

これは今月の18日に書いた新しいフランス料理の文化に関連しているのですが、パリ市内のマドレーヌ広場にある有名レストラン「リュカ・カルトン」のアラン・サンデレンスが自分の料理のスタイルをより軽快なものにしたいと発表したのは意義深いものです。アラン・サンデレンスは才能溢れる料理人ですが、彼曰く時流はより自由なもの、そしてより懇親性を求めているというのです。よって彼は新世代のレストランを提案することになるでしょう。このような試みはフランス料理の活性化には励みになりますが、ミシュランのガイドブックのルールからは外れてしまうので、勇気ある決断だと言えましょう。



駐日フランス大使
ベルナール・ド・モンフェラン